葉巻保管実践編

Dr.MatchPlayのワールド・シガー・ガイド
理論編では湿度と温度の相互作用について説明しました。難しすぎて良く分からないとの意見も頂戴しておりますが、私自身も一体何を書いているのか分からなくなることしばしばでした(笑)さて、ここからは葉巻保管について実際に何をどうするかということについてご説明します。
       
<一番難しいこと、それは、保管する葉巻の数を決めること>
理論編に書きましたが、湿度を安定させるには温度を一定に保つ必要があります……
と書くと、それじゃぁ理論編の「温度より常に湿度管理を優先する」と矛盾しているじゃないかとのご指摘を受けそうですが、ちっとも矛盾しません。世界中の誰に聞いても「葉巻の保管は湿度管理」ということになっているからです。

しかし、現実には温度を管理すると「より湿度の管理が楽に行える」ということなのです。宜しいでしょうか?えっ?そんなの屁理屈だって? よし、そういうことなら「理論編」は「屁理屈編」とでも改めしましょう(笑)

     

葉巻をダメにする方法

葉巻をダメにするのは簡単です。そのまま放置しておけば、季節にも寄りますが、春や秋、特に冬の乾燥期は箱入り葉巻で5日、葉巻がセロファンで包まれていても10日で乾燥が進み、さわっただけで表面がヒビ割れるようになるでしょう。また、夏場や特に梅雨の時期は湿度が80%を越えるために柔らかくなりすぎたり火が付きにくくなったり、また、匂いやカビが出たりします。
大枚叩いて手に入れた貴重な宝物をダメにしないためにも、打てる手は全て打ってお
きましょう。そうすれば、万が一ダメになっても諦めが付くと言うものです(笑)
     

一番難しいこと - 保管する葉巻の数を決める

最終的に自分は一体どれ位の量の葉巻を集めることになるのか、なんてことは最初に決められる訳がありませんよね。いずれお話ししますが、私も全く想像がつきませんでした。ところが、その結果、ズブズブと底なし沼のような、泥縄とでも言った方が正しいのか……とんでもないことになりました。

そこで、ムリは承知で、とりあえず数を決めましょう。目安としては、1日に何本くらい消費するつもりか、そして、1ヶ月で何本になるのか、ということを考えてください。例えば1ヶ月20本くらいは煙にしてしまうということであれば、箱単位で購入することになるでしょうから、最低25本を保管する準備をしなければなりません。また、最初の段階は好みの銘柄が見つかるまでの間はバラ売りで済ますという方もいらっしゃるでしょうし、あるいは、とにかく集められるだけ集めるつもりだ、という決死の覚悟を胸の内に秘められていらっしゃる方もあるかも知れません。
繰り返しますが、最初に考えるべきことは「葉巻の数」です。
     

数量別の保管容器

バラ売りをたまに煙にする場合

専用の保管容器は必要なし!チューブ入りのものに好きな銘柄が発見できればめっけもの。空になったチューブは捨てずに、それに保管することも可能です。

1ヶ月の消費量が25本以下の場合

これも専用の保管容器は必要ありませんね。サランラップ、あるいはジッパー付きビニール袋で代用可能です。あるいは、タッパウェアのようなものでも。ただし、保管期間は1ヶ月程度と考えておいてください。
サランラップ類がビンボー臭くていやだ!とお考えの方は携帯型、あるいは小さめの卓上型のものを選ばれても良いかも知れません。

3ヶ月から半年分の煙原料を保管する場合/75−200本

ここは意見が分かれるところです。消費量にもよりますが、一般には50本以上を収納できる卓上型のもの箱から移し変えるという方法を選ぶ方が多いようです。私は箱に入っているものはなるべくそのまま保管した方が良いと思っているので、予算と置く場所に余裕があるのであれば小さ目の飾り棚型でも良いと考えています。
それともうひとつ大切なことがあります。それは家族の理解を得るということです。卓上型は普通の家庭には似合わず(?)目立つものですから、持ち主が不在の間に邪険にされないとも限りません。必ず家族の理解を得てから購入するようにしましょう。

1年以上続ける覚悟がある場合/200−1000本

あなたは家族に愛されていますか? 愛されているのでれば間違いなく飾り棚型ですね。予算と場所の許す限り温度管理機能付きのものを選んでください。

世界中の主要銘柄を追いかける覚悟がある場合/1000−2000本

あなたの家族は忍耐強いですか? もし、そうであるならば、最初は温度管理機能付きの飾り棚型から始めましょう。そして、徐々に場所を確保して行きながら、最後は一部屋そっくり保管庫に変えてみましょう。

神の啓示により末代まで煙を吐き出しつづける場合/2000本以上

あなたは家族の中で尊敬されていますか? それらのことに自信があるならば、まず、専用の部屋を確保しましょう。あるいは自宅以外に一部屋確保しても良いかも知れません。そして、最終的には家一軒、ビル一棟まるごと保管庫を目指しましょう!
     

葉巻保管箱

自家製葉巻保管箱について

Internet Cigar Groupのサイトを見ると自家製葉巻保管箱のページがあり、釣りなどで使うアイスボックスや家具などの改造例が写真入りで解説が載っています。タッパウェアのみならず、トランクなど身の回りのものにちょっと手を加えるだけで葉巻を保管することが可能です。
葉巻はワインと同様にゆっくりと熟成が進行しています。従って新鮮な空気が適度に循環しなければ窒息してしまうでしょう。従って、タッパウェアのように完全に空気を遮断してしまう容器に長期間保管するのは避けてください。あくまでも一時的(4週間未満)な保管と考えてください。
私も最初はタッパウェアから始まりました。しかし、あるきっかけで……おっと、その件はまた別の機会に。
身の回りにあるものを葉巻保管箱に改造するポイントは次の通りです。
- 保湿器の入る大きさのものを選ぶ。
-  内側に杉板を貼る。
保湿器については後述します。また、葉巻の風味を損なわないということ、板が水分を吸収開放するので湿度の急激な変化を抑制できることから、「内側に杉板を貼る」ことをお奨めします。保管箱候補の内径を計り東急ハンズなどで加工を頼めば簡単です。
ただし、内側全てにピッチリと杉板を貼る必要はありません。私はトランクを保管箱に利用していますが、葉巻や葉巻の箱に直接触れる底にのみ杉板を敷いています。

専用保管箱について

葉巻専用の保管箱は携帯用の10本前後を持ち運べるものから、何十箱もの葉巻を箱ごと放り込んでも大丈夫な飾り棚型のものまで大きさも種類もさまざまです。
私は喫い終わった後のチューブから始まり、タッパウェアやトランクを経て(と言っても現在も一部使用中)某ブランドの卓上型のものに至り、ついには温度湿度管理機能バッチリの飾り棚型に落ち着きつつあります……この経過はいずれ改めて。

専用保管箱を購入する決心を固める前に、「温度管理をどうするか?」ということを忘れないようにしてください。せっかくの専用保管箱を手に入れても温度管理ができなければ宝の持ち腐れです。
とは言え、専用保管箱には非常に様々に贅を尽くしたものや美しいものが揃っているので、油断しているとアッと気づくと家の中に3つも4つも転がっているということになってしまいがちです。例えば、限定版とか、収集家版とか、製造会社は購買意欲をそそるためにアノ手コノ手で新製品を繰り出してきますから、要注意!

あまりに値段が安いものにも注意してください。保管箱としての機能を全く果たさないものがあります。値段もそれこそピンキリですが、日本国内の場合には50本前後のもので100,000円程度、海外の場合には75本前後で800米ドル程度だと思います。
例えばDAVIDOFFの保管箱はため息が出るほど非常に高額です。口に出すのも憚れるほど高額にもかかわらず、湿度計なんかは付いていません。なぜなら、彼らは彼らの考
える葉巻の最適保管湿度を保持することに絶対の自信を持っているからです。えぇ、
決して安いものではありませんよ。
さぁ、どうしますぅ?止めますか?今ならまだ間に合いますよ……
     

保湿器/湿度計/湿度計の測定??

保湿器

保湿器は携帯型や卓上型の葉巻保管箱に使われている蒸留水を含ませることにより密閉空間の中の相対湿度を70%前後に保つ小型のものと飾り棚型や保管庫に使われる電動ファンで水蒸気を送り出す型のものとがあります。

蒸留水を含ませる型で最も有名なのはフランスCREDO社の製品です。これは化学成分により1ヶ月に1回程度蒸留水を補給するだけで相対湿度を70%に保つという優れモノです。この型のものはいろいろな小道具制作会社から異なった名称で発売されていますが、原理的には同じです。
そして、いろいろな大きさがあり、その大きさに応じて保湿可能な葉巻の本数が明らかにされています。最も大型のもので葉巻50−75本に対して1個の目安で使用してください。
また、小型のものには葉巻とほぼ同じ大きさのものがあります。これは葉巻の箱や携帯用のケースなどに入れて使用することが可能です。こちらは大体葉巻10本に対して1個位必要です。

飾り棚型やそれ以上の大きさの場合には電動式のものが使われています。ほとんどの製品は湿度を予め設定できたり、湿度計と連動して動くようになっています。そして、湿度が著しく低下したり、あるいは蒸留水がなくなると警報で知らせてくれるものまであります。
私はタッパウェア、卓上型や小型トランクにはCREDO社型のものを、飾り棚と大型トランクには電動式のものを入れています。
保湿器に普通の水道水を使用すると湿度を一定に保てなかったり匂いやカビの原因になることがあります。必ず蒸留水を使うようにしてください。

湿度計

湿度計は東急ハンズなどで手に入れることが可能です。レトロな雰囲気の漂うアナログ式のものから最新デジタル型までいろいろなものが並んでいます。
現時点で入手可能な湿度計のほとんどが±5%前後の誤差があることを覚えておいて下さい。特に市販のアナログ式湿度計は実際の湿度と表示がズレていることが多々あります。

湿度計の測定??

湿度計を入手したら、最初に正しく表示されているかどうかを確認してください。手順は次の通りです。
1)湿度計、食塩、小皿、蒸留水と湿度計が入る大きさのタッパウェアを準備します。
2)タッパウェアの中に小皿を置き、小皿にスプーン1杯分の食塩を盛り、食塩が浸る程度に蒸留水をたらします。
3)小皿の脇に湿度計を置いて蓋を閉じ、6時間程度放置します。
4)6時間経過した後、湿度計が75%を示しているようであれば、その湿度計は湿度を正しく表示しています。
ということで、「密閉空間に水で湿らせた食塩を置くと湿度は75%になる」らしく、その科学的特性を利用した湿度計の測定方法だそうです。
実際に試したところ、デジタル式は正確に75%を示しましたが、アナログ式のほとんどは5−10%の誤差を示しました。
(湿度計の測定状態の写真:
塩と水の儀式
一部のアナログ式湿度計には裏側に調整のための穴が開いており、小型ドライバーで
指針の表示位置の調整が可能です。
好みが分かれるところですが、経験的にはデジタル式湿度計の誤差の方が小さいよう
です。
     

葉巻保管箱の下拵え/葉巻のセロファン/葉巻のローテーション

葉巻保管箱の下拵え

最初に保管箱全体に湿り気を一定に帯びさせることから始めます。保管箱が乾いてい
ると保管のために入れた葉巻の湿度を保管箱そのものが吸収し、乾燥させてしまうこ
とがあるからです。
自家製の場合もタッパウェアへの一時的な保管の場合を除き、内側に貼った杉板に湿り気を帯びさせる必要があります。
そこで準備しておいた蒸留水でタオルを湿らせ、水滴が落ちないように固く絞ります。保管箱の内側を綺麗に拭いてください。自家製も同様に内側に貼った杉板をふきます。決して表面に水滴が落ちないように気をつけてください。水滴が落ちた所に葉巻が触れると水分過剰になってしまいます。

次に保管箱に保湿器と調整済みの湿度計を入れ、そのまま12時間以上放置してください。これはCREDO型の場合もも電動式の場合も同じです。12時間を経過した後、恐らく湿度は70%前後になっていると思われます。その時点で初めて葉巻を保管する準備が整ったと言えます。

そして、最初の数日間は定期的に湿度計の表示をチェックしてください。1−2週間して安定すれば大丈夫だと思います。

葉巻のセロファン

熟成を促進するためにセロファンを外すべきという意見が大多数です。しかし、個人的には日本の気候や湿度の変化を考慮するとセロファンはそのままで保管した方しても良いと思います。ただし、買った時のままの状態ではなく、どちらか片方を開けて空気が通るようにしておいた方が良いでしょう。

葉巻のローテーション

車の前輪と後輪のタイヤを定期的にローテーションすると減りが均一化される、という話がありますが、それと同様に保湿器に近づくほど湿度が高くなりムラが出るので保管箱の中の葉巻も定期的に場所を入れ替えた方が良いとする意見があります。頻度は1ヶ月に1回程度ということのようですが、今まで真面目にやったことはありません。ローテーションする前に全て煙と化しているからです(笑)しかし、長期的に保管するのであれば実行するにこしたことはないでしょう。
     

温度と湿度の組み合わせの確認

温度は華氏70度を維持、普段煙にするものは卓上型保管箱で湿度70%、また、長期保管は葉巻の箱ごと保管箱に入れ湿度71−72%を保ってください。これで完璧です。
     

虫の駆除方法

Tokyo Cigar Infoに掲載された「虫の駆除方法」を転載します。以下、原文のまま。
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掲示板に出てきた、虫の駆除方法を和訳しました。ログコーナーだけのおまけです!
Buehlerさん
「煙草虫対策としての葉巻冷凍」はちゃんとした方法をとれば、葉巻をやわらかくしなくて済みます。
つたない意見ですが、重要な点はいくつかあります。ゆっくりと冷やすことと冷蔵バック(ZIP LOCKといわれるチャックで口がしまるものです。訳者)を使うというのが最も重要な点です。
24時間から48時間(冷凍庫のタイプによる)で冷凍してやれば十分でしょう。
あなたがいみじくも言い当てたように、それから冷蔵庫に入れて冷凍に要した時間の2倍をかけてとかす必要があります。
もしここで、直接葉巻をヒュミドール(葉巻保存箱のことですね。訳者)を入れると湿気のせいで、葉巻が歪んだり割れたりすることがあります。湿気は急激な温度差のせいで起こります。
葉巻を入れるバッグから十分に空気を抜いておくとラッパーが湿気なくて済みます。
Ted氏
Buehlerさん、葉巻の冷凍はよく行われることなのでしょうか?そしてどんな影響を葉巻の品質に与えるのでしょうか?もし、品質に影響を与えるのであれば、虫に気をつけることとそのまま保存するのではどちらがいいのでしょう?教えてください。
Beuhlerさん
--- 葉巻の冷凍はよく行われることか?
そうとも言えるしそうでないともいえますね。生産者は巻く前に煙草葉をいぶす(fumigate)のが普通です。葉巻を巻いてから冷凍する所もあります。冷凍するのは時間もお金もかかるので、大抵はいぶしていると思っていいでしょう。
「煙草のあるところに煙草虫あり」です。少なくとも卵はあると思ってよいでしょう。虫がかえるには、摂氏21度以上、湿度75パーセントという条件が必要ですので、普通エンドユーザー側では、温度を21度以上にあげないようにするのが普通です。でも、100パーセント安全な方法などありません。私は、19度で卵がかえってしまったと言う経験もあります。
ここで誤解していただきたくないのは、保存の仕方が悪いと絶対に卵がかえるというものでもないということです。大抵はなにも起きません。しかし冷凍しておけば安心だし、虫を駆除するには十分な効果があります。もし、運悪く煙草虫がヒュミドールを徘徊するようなことがあれば、絶対に冷凍すべきです。
--- 品質に影響はあるか?
私の経験からすると、品質、構造、薫りに影響はないと思います。冷凍された葉巻と冷凍されてない葉巻の区別は、私にはできません。同じブランド/タイプの葉巻で冷凍したものと冷凍しなかったものを用意し、ブラインドテストをしたところ、私や他の熟練者ともに正確に区別できませんでした。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。簡潔に言うと、25年間1,000本を折にふれて所蔵した経験から言うと12本以上の葉巻を煙草虫にやられたことはありません。そしてそれは、いくつかのやられた例外を除けば、冷凍していないものでした。
Ted氏 Adrian,
詳細な情報をどうもあがとう。「きちんとしたやり方で冷凍する」が鍵ですね。おっしゃっていただいたやり方で、保存してみます。
25年の経験がものをいいますね!
新しい知識が増えました。ありがとう。
Happy Smoking!
TED
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実際のやり取りは英語で行われました。そして、その内容をTokyo Cigar Infoの井上さんが翻訳掲載されておりました。転載を快くご承諾下さった、Buehlerさん、Tedさん、井上さんのお三方に改めて感謝申し上げます。

葉巻保管理論編   葉巻保管番外編:湿度王への道