葉巻保管理論編

Dr.MatchPlayのワールド・シガー・ガイド
Humidorの使用方法や葉巻の保管については、いろいろな人がいろいろな場面でいろいろに薀蓄を開陳されておりますが、ひとことで言えば「タバコ生産地の環境を再現」ということであり、具体的には次の2つに要約されるようです。
1)保管には温度華氏70度(摂氏21度)、 この温度での相対湿度71%とする。
2)温度を維持できれば湿度管理は楽になる。
               

基本的な数値

ほとんどの書物や資料、あるいは人に尋ねると概ね「温度は摂氏20度前後、湿度は70%前後で保管する」との答えが返ってきます。そして、英語で書かれたものを探すと「華氏70度前後、相対湿度70%」という記述を見ることができます。
しかし、私は「華氏70度での相対湿度71%」をお勧めします。さて、この相対湿度というのがなかなか曲者です。これは「華氏70度の時に湿度計の針が71%を指す状態」ということですが、では、温度が一度上がる(下がる)と湿度はどうなるのでしょうか?
答えは「華氏70度の時の相対湿度71%を保つには、温度の変化に応じて湿度を変える(湿度の変化に応じて温度を変える)ということになります。

高気温時の湿度71%と低気温時の湿度71%は全く意味が異なっています。葉巻を保管する際には湿度計が71%を示すのは気温が華氏70度の時のみという具合に考えた方が良いかもしれません。
そして、気温が華氏70度を越えた場合には湿度計の針は71%以下を、華氏70度以下の場合には71%以上を示すように調整しなければ「華氏70度での相対湿度71%」を保っていることにはなりません。
つまり、「華氏70度での相対湿度71%を保つ」というのは「華氏70度の時に湿度計が71%を示すために必要な空気中の水量を一定に保つ」ということなのです。
     

湿度(しつど)

日常的に喫う葉巻を入れる葉巻保管箱の湿度は70%が適当だと思われます。そして、長期間保管する場合には71−72%、半永久的(?)に保管する場合は73%が良いとされています。
69%は下限境界域で、68%になると乾燥が始まり、ラッパーが割れやすくなります。そして、67%から葉巻の味や香りの重要な構成要素である油分が抜け始めると言われています。
逆に、74%をこえると細胞の膨張に伴って風味などを構成する有機成分の崩壊が始まります。75%をこえると葉の細胞が膨張を始めます。そして、76%をこえるとカビが出やすくなります。
湿度管理は葉巻そのものを製造された状態で保ち、熟成させるために極めて重要な事項です。
いずれも気温華氏70度の時の相対湿度です。
とは言え、人によっては「65%」とか「68%」、「ドミニカ産はもう少し高め」などなどの意見も存在しております。最終的には経験と自分の好み
で決めるしかないでしょう。
     

温度(おんど)

華氏70度、ほぼ摂氏21度が最適のようです。上限境界域は華氏72度、摂氏22度前後で加減境界域は華氏65度、摂氏18度前後という具合に湿度よりも幅があります。
しかし、大切なことは、いずれの温度設定の場合にも「華氏70度での相対湿度71%を保つ」ということです。各温度下で「華氏70度での相対湿度71%を保つ」ために湿度計が示すべき数値は後述します。

さて、華氏73度、摂氏23度前後をこえると、葉巻を製造する過程でまぎれこんだ害虫の卵が孵化する可能性が高くなります。そして、華氏75度、摂氏24度前後をこえるとアオカビが発生することがあります。
また、華氏64度以下では熟成が遅くなります。そして、華氏60度、摂氏15度前後以下で保存すると外気温度との差で結露することがあるので注意が必要です。それから、華氏60度以下では害虫や害虫の卵は冬眠状態に入ります。
つまり、温度管理は害虫やアオカビなど外的な危険因子を取り除くための重要事項ということになります。
     

害虫

人によって華氏80度、摂氏26度前後以上とかあるいは摂氏30度以上というように意見が分かれるようですが、ただひとつ言えることは害虫が付着しておらず、境界域内の気温であれば大丈夫ですが、万が一付着している場合にはどんなに温度管理しても被害に遭うこともあると思っておいた方が良いと思います。
なぜなら、自分の手元にくるまでの間に、運搬中などに葉巻の温度が上がる可能性があるため、自分の手元に届いて厳密に温度管理されたHumidorに入れても間に合わないことがあるからです。

害虫が出た場合には、ビニール袋などで密閉し箱ごと48−72時間ほど冷凍庫に入れ、その後に冷蔵庫に移して24時間置いて、徐々に華氏20度に戻す、という対処方法が有効だと言われております。これにより付着している害虫および害虫の卵を完全に死滅させることが可能だそうです。

現に米国のあるディーラーは入荷次第全部一度冷凍庫の洗礼を受けさせた後でしか販売しないと公言しているようです。しかし、一方で、「葉巻の害虫が出るか否かは美味い葉巻を楽しむ上で避けられないリスク」という意見もあります。
また、米国の出版社は3人に1人が害虫の被害に遭っており、70%の人が冷凍庫をくぐらせたというという調査結果を報告しています。

ちなみに、私の場合、害虫が出た経験は一度きりです。あまり心配しても精神的に良くないでしょう。
また、Cigar Aficionado Cigar Beetlesにはより詳しい記事が掲載されています。
     

カ ビ

湿度や温度によりアオカビが発生することがあると申し上げました。残念ながらアオカビについては有効な対処方法はないようです。予防としての温度と湿度管理が重要だと思います。
アオカビは湿度76%を越えると温度に関係なく発生の危険性が極めて高くなります。私の実験(?)では17度付近でも発生しましたので、充分注意が必要です。もちろん、温度が高ければさらに危険が増します。
また、理想的な保存状態で数年を経て熟成が進行すると葉巻の表面に白っぽい粉のようなものが付着することがあります。通称BLOOMと呼ばれる良性のカビの一種で、熟成の目安と考えられています。葉巻のラッパーを傷つけないように柔らかいティッシュペーパーやハケなどで簡単に落とすことができます。チーズのカビのようなものだと考えていただいても結構でしょう。

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