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  ハバナのとある酒場からの手紙/Letra de la bar en La Habaha 
   

2003年9月8日

 
 10 Septemble 2003
   

Glosario

 

    ひょんなことから、ある人物と知り合いました。そして、この人物からハバナのとある酒場に置かれたノートの話を聞きました。いつ、誰が置いたのか、店のオーナーさえも知らないそのノートには、その酒場を訪れたさまざまな人たちが思い付くままにいろいろなことを書き残して行くのだそうです。そこで、そのノートの中から特に目を引くものをピックアップして送ってくれるように頼みました。
これより、その人物が折を見つけてはノートから書き写し、あるいは記憶に残った出来事などいろいろ織り交ぜて、その酒場から送られるイエローパッドの書簡とスナップ写真をご紹介したいと思います。 (2003/09/19)
   

prólogo

 

キューバにはインドに似た独特の魅力があるらしい。繰り返し訪れる人が多いのはきっと何かが俺たちを引き付けるからに違いない。ハバナの港に近い旧市街の細い路地の角に古い酒場がある。その片隅に新しいのやら古いやらのノートが放り込んである木箱が置いてある。中は大抵がアルファベットのカナ釘文字だが、中国語や日本語も時折、目に付く。
 
ある日の夕刻、斜めの陽射が店の親爺の顔を照らすのを眺めながら、いつものように俺は人民ビールパティクルサードを飲んでいた。視界の端に東洋人、否、服装からすると日本人が入ってきた。隅のテーブルに座ると例の木箱からノートを一冊引っ張り出し、ブカネロを注文する。そして、おもむろにそれを開くとなにやら書き込み始めた。

この酒場は窓が無いというか穴倉みたいな所だから、観光客は殆ど来ない。そしてクバーノも年寄りだらけの店だ。キューバの老人は寡黙なのと若者より好奇心の強いのがいるが、この店は大抵静かだ。俺はこの店の親爺の作るアヒアコチチャローネが好きなのと、人民ロンの雰囲気漂うパティクルサードが珍しく置いてあるのが気に入って通っている。
 
その晩、俺は思いがけなく
2本目のロンの口を空けていた。とは云っても半分近くは店や他の親爺の胃の腑に納まったに違いない。看板の直前に目を覚ました俺の傍らには、涎のついたノートと吸い指しの葉巻。そして親爺が置いていったに違いない、場違いな水色のフーゴデナランハのパックがひとつ、横倒しになっていた。
 
翌日、俺は早い時間に酒場に向かった。例のノートの続きを読むためだ。そのノートは
3
人の異邦人の男女による書き込みが、殆どだった。俺はビエハの宿で一眠りしてから昨晩の残りを此処でまた読もうと思った。そして幾つかを書き写して日本の鎌倉に住んでいる知人に送ろうかと考えたのだ。陽の当る、瑕だらけのカウンターの隅に腰を落ち着ける。奥の調理場にいた親爺は芋の皮を剥く手を止めずに俺の顔を見て、
 

「チーノ、2ペソ、貸しになっているぜ」

     
     
     
   
     
     
    続く...