正直堂  □ 使い方  □ 新着記事   □ 一覧表示  □ 検索  □ 過去ログ
[ 最新記事をトピックトップへ ]
トピック内容表示

    [22] 22. 葉巻の保存条件:70℉/70%?-

    ■親トピック / 記事引用

    □投稿者/ T&M
    □投稿日/ 2000/10/11(Wed) 22:28:16
    □URL/ http://www.cgarsltd.co.uk/

      質問:
      葉巻の最適保存環境は70℉/70%である、という説に、個人的には賛同されてないとのこと。また、イギリスでは他国より若干低めの湿度設定のようです。これは、個人で判断すべきことではありますが、あなたにとって最適な葉巻の保管環境とはどんなものでしょうか?

      回答:
      率直に申し上げて、私もはっきりとは判りません。

      しかし、それでも、「私は最適環境を知っている」と自称する人たちよりも、実際には上手く保管出来ていると思っています。70℉/70%とまるで呪文のように唱える人は何時、何処で、どうやってそして何故こういう数字が最適であるか決められたか全く知らないのではないかと思います。 それら多くの人々は湿度計の調整方法すら知らないではないでしょうか。(例えば、デジタル式のものは誤差が±2%、アナログ式のものは±5ないし10%もあるということすらもです。)

      少なくとも私は最適な保管環境を自分自身で確かめ、それなりに意味のあることを探し当てたように思います。

      大変奇妙なことに、これまでに出版された多くの書籍や資料中に、70℉/70%についての科学的な根拠についての記述を見付けたことがありません。Alfred Dunhill氏が第一次世界大戦の前にイギリスの国立物理研究所のために調査をしたようです。しかし、その結果については明らかにされていないようです。そして、Dunhill氏はその著書『The Gentle Art of Smoking』の中で葉巻き保管の理想的な温度は華氏60度から65度と推奨しています。しかし、湿度に関しての具体的な数字の記述はありません。

      これは、近年数多く行われた温度のワインに与える影響の実験結果と一致するようです。それによればワイン保管の最適温度は華氏55度から65度で、65度を超えると不可逆的にフルーティーさが減少し、70度が絶対の限界でそれを超えるとフルーティーさの破壊具合が指数的に増加します。

      フルーティーさとは温度に対して非常に不安定な芳香性エステルであると考えられています。従って、安全を見て60℉で葉巻きを保管するのが賢明だということのようです。より低い温度はワイン(おそらく葉巻も)を傷つけることはありませんが、熟成過程は遅れるでしょう。そして、それ以外に恩恵は得られないようですから実用的な意味はないでしょう。

      更に、タパコビートルの卵が70℉以下では孵化しないという説は、私の経験では楽観的すぎるということが証明されています。70℉で孵化するのは何度も体験しましたが、60℉で保管している葉巻に被害があったという記憶はありません。

      湿度の具体的な数値に関しては何も科学的なことは分かっていませんが、ビンテージ葉巻に多少でも経験を持つ人は全員長期保管には60から65%が最適湿度であると意見が一致します。70%で保管された葉巻きは60から65%で保管されたものほど上手く熟成しないようです。また、過湿、例えば75%で保管されてものはすぐにブーケを失ってしまうということは良く知られていることです。

      通常、私は新しい葉巻は60℉と65%で熟成させます。非常に古い葉巻の場合は55℉と60%で保管し密閉します。これらの数値が果たして最適値であるかどうかは判りませんが、今までのところ私にとっては良い様です。

      では、何故70/70神話が生まれたのでしょうか。想像するにこんな具合です......

      葉巻は相対湿度72%マイナス年令5年毎に1%で吸うと最も美味しく感じます。私はこのことを試行錯誤の結果、ずいぶん前に発見しました。その後、Davidoff氏が彼の葉巻を72%の状態に置くことにこだわっていることを本で知りました。彼も試行錯誤で発見したのでしょう。

      そして、数十年前に売られていた葉巻は工場を出る時既に数年間熟成されており、Dunhillのような名の通った業者は販売するまでに更に熟成させることにこだわりましたから、そのような古き良き時代の葉巻は概ね客の手に渡る段階で既に10年寝かせた状態のものでした。つまり、そのような葉巻は70%でもっとも美味しく感じるはずです。

      そこで誰かが「もし、湿度70%で一番美味いのであれば、熟成させるのも同じ相対湿度が一番いいであろう」という簡単な過ちに陥ったのではないでしょうか。(Davidoff氏はその著書『The Connoisseur’s Book of the Cigar』で葉巻き保管の理想的な相対湿度は67から72%と言っていますが彼も同じ過った考え方をしてしまったのかも知れません。)

      そして、70℉は多分ある“専門家”が19世紀の昆虫に関する書物に甲虫の卵は70℉以下では孵化しないという記述を読み、従って、葉巻はその温度以下で保管すべきだと決めたことに起因するのだと思います。つまり、葉巻きがその温度以下で最も良く保存されるならば熟成にも良いと思ったのではないでしょうか。

      更に、70/70はきりのいい数字なので覚えやすく最も引き合いにも出されやすいのだと思います。そして、そのうちに多数意見が常に正しいとされるように、最も引き合いに出されるものが「真実」となるのです。

      ここでマーク・トゥエインが言っていたことを思い出しました。「10%の人は実際に物事を考えており、10%の人は自分が物事を考えると考え(思っ)ている、残りの80%の人は物事を考える位なら死んだほうがましだと考える(思う)」



このトピック内容の全ページ数 / [0]