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    [18] 18. 葉巻の風味と化学成分-

    ■親トピック / 記事引用

    □投稿者/ T&M
    □投稿日/ 2000/10/11(Wed) 22:24:44
    □URL/ http://www.cgarsltd.co.uk/

      質問:
      バニラ、コーヒー、スパイシーと言った叙述的な言葉が葉巻の味を表現するのに多用されます。これらは本当に存在しているのでしょうか、それともただ単に想像されているだけてじょうか。

      回答:
      それらの味は確かに存在していて、最も一般的なものは化学的に判明しています。

      人間の嗅覚器官はいろいろな種類の化学分子を正確に識別することが出来ます。 当たり前のように思っていることですが、これを証明するのは簡単です。例えばオレンジかバナナの風味を表現してみてください。オレンジはオレンジの味がし、バナナはバナナの味がするとしか表現できないでしょう。何故でしょうか。それは二種類の果実の香りが、嗅覚器官にはそれぞれ一種類の化学成分として知覚され、更に臭覚器官が優れているために他の香り=化学成分と混同されることがないからです。そして、オレンジの香りはoctyl acetateと呼ばれる化学成分であり、バナナの場合はn-pentyl acetateなのです。

      さて、有機化学の講議で皆さんを退屈させるつもりはありませんので例を少しだけ述べることにします。アーモンドの味はベンズアルデヒドとよばれるアルデヒドの一種です。干し草はクマリンと言うラクトーンです。ピーナッツは2-methoxy-5-methypyrazineというケトンです。バニラはバニリンという芳香族フェノールです。ココアとコーヒーはバニリンとdiacetylというケトンとの様々な組み合わせです。そして、これらの有機化合物は非常に複雑でエディンバラのスコッチウィスキー研究所は新しい樽の木の中に200を超える揮発性油分を確認しています。

      最も興味深いのはタバコの独特の風味成分です。これは芳香族フェノールでそれに慣れていない人は「古い革」のようなと表現します。もちろん、葉巻が革靴の中に隠されて密輸されてでもいない限り「古い革」が存在する筈はありません。また、若い葉巻の荒いタンニンのような味は天然のフェノールの異量体であり、時間とともにより単純で刺激の少ない芳香族フェノールに分解されていきます。

      タバコはニコチン(C6H4NC4H7NCH3 あるいは略して C10H14N2)をリンゴ酸塩、あるいはクエン酸塩として自然に含有していることが特異点です。ニコチンはタバコの葉の重量の5%(Encyclopaedia Brittanicaによる)であり、また、乾燥させたタバコの葉の2−8%(Martindale’s Pharmacopedia)であり、とても不快で刺激的な臭いと鋭く持続性のある味がします。

      これは若いタンニンの様な味とは全く異なりますが良く混同されます。ニコチンはそれだけで自然に醗酵し沢山の芳香性の有機化合物を生成すると同時にアンモニアを放出します。生成された各種化合物は最後にはお互いどうしやその他物質と反応し更に様々な芳香性の化合物を形成します。それら化合物のいくつかは生成過程で極少量の酸素が必要ですが大量の酸素は逆に幾つかの生成物を破壊します。

      キューバ人達は恐らくこの事実に気が付いていたのでしょう。化粧箱入りの葉巻は通常ボックスプレスされ、塗りの施されていない木箱入りや、キャビネット入りの葉巻が必ず丸いのは、つまり、熟成の進み具合を変えるためだと思われます。

      タバコの味は実際はアルデヒド類、アルコール類、有機酸類、ケトン類、フェノール類やテルペン類といった様々な芳香性の有機化合物の組み合わせです。興味深いのはそれぞれ違う類に属する化合物はそれぞれに違う生成スピードと葉巻き内での半減期(消失率とも言えると思います)を持っていることです。もし、味を構成している物質の化学的特徴を良く知っていれば、箱の状態と保管状況がハッキリしている葉巻きについては驚くべき精度でその葉巻の年令を特定出来るでしょう。 更には葉巻の熟成過程に応じて温度、湿度、酸素への露出量を調整することにより最短の時間で最適な結果を得ることも可能でしょう。



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